北海道は大学生の間に一度は行きたい憧れの場所だった。なにせ広いので、充分満足が行くまで廻りたければ一箇月は掛かる。そうなると旅費もそれなりに掛かるので、おいそれとはいけない。やっと行けることになったのは大学四年の最後の夏休み、木曽路へのドライブ旅行の一週間ほど後の事だ。
私が大学生だった頃は飛行機便はもちろんあったと思うが、学生の身分で乗る乗り物ではなかった。新幹線も勿論まだ通っていない。確か青函トンネルもまだ無い時代で、津軽海峡を渡るには青函連絡船を使った時代だ。
旅行に先だってブルーブックスのガイドブックをまず買い求め、大体のルートと旅程を決める。旅行に充てられるのは、車中泊を含め１２日程度。帰宅日ははっきりとは決めてなかったが、夏休みがそろそろ終わる９月１日の出発だったので、必然的に帰らねばならない日にちは決まってしまう。決めてあったのはルートだけで、何処に泊るかは行ってみてということにした。函館から北海道入りし、南側の海岸線沿いに進んで釧路まで行き、その後網走のほうへ北上してから札幌へと横断し、小樽を見てから函館へ戻るという大体そんなルートだった。
