norimakihayateの日記

バーチャル旅日記からスタート。現在は私の国内旅行史に特化しています。

五右衛門風呂と島崎藤村

f:id:norimakihayate:20190306084150j:plain

 鳥居峠と鳥居隧道を抜けてY宿まで出掛けた次の日はもう帰ることになる。

 N宿のH家で思いだすのは、五右衛門風呂を体験した事。実は五右衛門風呂はこの時が初体験ではない。この時より二年程前に、隣町のI市の郊外に棲んでいた友人宅へ寄らせて貰った折に初めて五右衛門風呂なるものを見せて貰って一緒に旅をしたM氏と一緒に体験までさせて貰っていた。

 N宿のH家でお風呂に入れて貰った際に、そこのお風呂が五右衛門風呂だったのは驚きというより、ああこういう屋敷に似合うのはやはり五右衛門風呂なのだなと妙に納得した思いだった。確か湯船も屋敷の母屋ではなくて、一旦裏庭を外に出て、飛び石づたいに風呂のある東屋のような所へ風呂に入りに行ったのだった。それはまさしく井伏鱒二が描いていた大正から昭和初期の世界だった。

 もう一つ忘れられないのは、そのH家には島崎藤村が泊まった事があり、その際に和歌だったか俳句だったかの色紙か短冊を残していた事だ。それを見せて貰ったような気もするのだが、はっきりとは憶えていない。ただ、そういう物が実際にその家に遺されているというのを聴いたのはとても衝撃的な事だった。

 このN宿、H家は次の朝、未明に出立させてもらって、早朝の20号線を我が家までそれこそ疾走で約4時間で走破したのは鮮明に憶えている。