箱根湯本のホテル滝亭のことは実はあまり覚えていることが少ないのだが、洋風造りの部屋から渡り廊下を隔ててゆく温泉に、特別天然記念物だとかいう北投石というのがあったのはなんとなく憶えている。ラジウムを含む鉱石だとかで、健康にいいというのだ。昔よくあったラジウム鉱泉などというものの類なのだろうと思ったのだが、この時から12年後に台湾を二度目に旅行した際に、北投と書いて「ペイトウ」と読む温泉街があって、そこがそもそもの北投石の発祥の地だということを知ったのだ。世界中でもこの場所と日本の秋田にある何とか温泉というところからしか採れないという北投石を何処かから譲り受けたものらしかった。