伊豆保養荘の別荘を貸してくれたのは、仕事上の付き合いのある小さな会社、Ｔ産業という会社の社長だ。私の部下だったＴ君がこの社長と懇意にしていて、社員の保養荘として使っていた別荘を一晩貸してくれるというのだった。白田海岸を見下ろす山の斜面に建っていて、二階建てで下の階に温泉の風呂があるというような造りだった。
私は小田原でＴ君と落ち合って、二人で伊豆急に乗り片瀬白田の駅から３０分ほど、ぶらぶらと山を登って別荘を探し当てたのだったが、何とその時別荘を借りる手筈をしたＴ君が鍵を持っていると思い込んでいたのに、彼はもう一人の幹事のＫ君に鍵は渡してきたとのこと。山登りで汗を掻いて、さっと温泉に入って冷蔵庫に呑み放題で入っているというビールを一刻も早く呑みたかったのに、二人で３０分以上、山の中で待たされる羽目になったのだった。
