県境を過ぎた辺りからだんだん道が悪くなる。舗装されていない箇所が幾つもあって、前日の雨でぬかるんでいてズボンも自転車も泥だらけになってくる。
11時を過ぎると段々お腹が減ってくるのだが、店らしきものはおろか、家一軒見当たらない。爪先上りの坂というのを初めて知ったのは、川端康成だったか、太宰治だったか、井伏鱒二だったかなどと考えながら登ってゆく。最後のほうはとうとう自転車を降りて押して登る。
もう駄目かと思う頃、少し坂が楽になってきて、再び自転車に跨るとトンネルが見えてきた。山伏峠を越える山伏トンネルだ。
このトンネルはその後何度も車で通過しているが、何時の間にか少し離れた所にもう少し広い新山伏トンネルが開通し、このトンネルは通行禁止となったそうだ。自転車で登ったこの時はカメラを持参して居なかったので当時の写真は残っていない。今日の画像は借り物だ。