norimakihayateの日記

バーチャル旅日記からスタート。現在は私の国内旅行史に特化しています。

八つ墓村

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 昨日は万富から出発して瀬戸を経由し、上道(じょうとう)までやってきた。上道駅には山陰にも同じ漢字で、あがりみちえきというのがあって紛らわしい。その前の瀬戸駅も、これとは別に愛知県に尾張瀬戸駅があって、瀬戸物で有名なのは後者のほうだ。

 

 二日ほど前の三石から岡山県に入っている。岡山と言えば、何と言っても横溝正史を話題にしたい。横溝の怪奇推理小説には舞台として岡山が多々出てくる。鍾乳洞のある山奥の里だとか、瀬戸内海の小島などだ。横溝が祖父の実家を頼って戦火を逃れて疎開していた時の経験が、戦後発行を許された探偵小説に生かされたことになる。

 

 横溝の怪奇推理小説の代表作と言えば、選ぶのが難しいが、八つ墓村はその一つに挙げられるだろう。映画化された際のロケ地として岡山の鍾乳洞が使われたということもあるが、何と言っても大量殺戮事件のアイデアの元となった実際の津山事件が岡山の山奥で起きているということが横溝にこの小説を書かせる大きな動機になったのは間違いない。

 

 横溝の怪奇小説に出遭ったのは、大学生の後半か就職してすぐの頃だったと思っていた。ちょうど角川が大々的に横溝の小説を文庫シリーズで売り出していた頃だ。市川昆が金田一耕助役に石坂浩二を起用して一世を風靡した犬神家の一族が上映されたのも同じ時期だった筈だ。

 

 その頃、電車に乗って通学だか通勤だかをしていた時、目の前に立っていた若い女性が一心に一冊の文庫に読み耽っていて、何を読んでいるのだろうと何気なく覗いたら、それが犬神家の一族だったのだ。以来、私も金田一シリーズに嵌って、次々に読破していった。

 

 その時が横溝正史を知った最初だったとずっと長く思っていた。しかしある時、横溝正史の作品の紹介記事を読んでいて、遥か昔に目にした記憶の名前に行き当たったのだ。御子柴進という名前で、小学校の4年か5年の頃、図書室にあった古い推理小説本を探し出してきて夢中になって読んでいた頃を思い出したのだった。まさか、それが同じ横溝正史の作品であったなどとはかなり長い間知らずにいたのだった。