田安門の内側はもうすぐ武道館だった。この武道館へはこれまでの人生で二度だけ入ったことがある。ビートルズの日本公演でもなく推しのミュージシャンのライブツアーでもない。予備校の入学式とその翌年の大学の入学式だ。あの頃、大規模なマンモス予備校が武道館で入学式をするのは珍しいことではなかったようだ。
武道館前から北の丸公園を散策する。ここには出張ですぐ傍の科学技術館に来る度に昼休みに散策した馴染みの場所だ。
更に進んでいくと立派な煉瓦造りの洋館が見えて来る。旧近衛師団司令部庁舎跡だ。ここを訪れた時は国立近代美術館の別館工芸館と呼ばれていたと記憶しているが、何時の間にか工芸館という言い方はしなくなったようだ。この建物をみると宮部みゆきの小説、蒲生邸事件をどうしても思い出してしまう。実際にこの建物をモデルにしたのかどうかは知らないが私にとっての蒲生邸のイメージはこの建物なのだ。
