広島宮島口で行われた業界団体分科会の年一回の宿泊合宿の持ち回り幹事は翌年は私達の会社の番だった。しかし私がそれに出ることはなかった。その年の年末人事異動で私が部署を移ってしまったからだ。
エンジン関連の部署から、サスペンション、ブレーキ、ステアリングなどを扱うシャシー関連部署への異動だった。相変わらず自動車用電子制御機器の担当ではあったのだが、扱う被制御機器は全く変わってしまった。
異動してすぐ北海道への寒地試験参加を要請される。シャシー部門にとって冬季の寒地試験というのは最も重要な一大イベントなのだった。あまりに重要視しているので、エンジンから移ったばかりの私は眉を潜めていた。何のかんの言って、冬場の物見遊山ではないかという気がしたのだ。
北海道へは勿論飛行機で向かうのだが、私が最初に訪れたのは網走湖の畔にある女満別空港のすぐ北側の某ブレーキ関連機器メーカのテストコースだった。北海道に飛行機で入ることも、女満別空港を使うのも初めての経験だった。
