デトロイトに来た七日目はカンファレンスの最終日で、私とT氏の発表の番がやっと廻ってきた。T氏のほうが先で午前中に終り、私のほうが午後の第一番目だったので、昼食は採らずに準備に充てて発表の後昼食を採りにいくことにした。
その日の朝、私達のセッションの座長を務める大学教授のS氏とブレックファーストミーティングを行った。S氏は秘書としてちょっと小太りの金髪女子を伴っていた。同行のT氏は彼女の事をずっと、Dr. S’s daughter (S博士の娘)と陰で呼んでいた。会場には他にセッションの副議長を務めていた赤毛のリン何某嬢というのが居て、事務的な面倒を見てくれていた。私の講演が終わった後、彼女が傍にやって来て「Excellent! 」と私の発表を褒めてくれた。主には私の英語の発音についてだと理解したが、それだけ日本からの発表者の発音はネイティブの人達には聴き取り難かったようだった。何せ30年前の話である。
私の発表が終わってT氏と二人で日本食堂に食事に出て、戻ってきたら全てのセッションは終了していて、展示ブースなどもすでに撤収作業が始まっていた。最後に座長のS教授とその秘書Dr.S’s daughterと握手をしてコボホールを後にしたのだった。