大学の専門課程の中で卒論の準備を始めた頃、世の中に普及し始めていたマイクロコンピューターには三つの大手があった。インテル社の8080、モトローラ社のMC68、ザイログ社のZ80の三つだ。卒論を書くのに使ったマイコンは確かZ80だったと思う。
マイコン上で動くソフトはアセンブリ言語が普通だった。もう少し正確に言えば、マイコンはその機種固有の言語である機械語で動いていて、その機械語を作るソフトウェアがアセンブリ言語と言うべきかもしれない。アセンブリ言語は従ってマイコン機種毎に微妙に異なっていた。
卒論のテーマはマイクロコンピューターによるクレーン制御というような感じのものだった。実験に使う道具仕立ては結構大掛かりなものだったので二人でコンビを組んだチームで、2チームで一つのテーマを扱うことになる。つまり4人の共同作業だ。一つのチームは道具作りを主に担当し、もう一つのチームは回路基板とプログラミングを主に担当した。主にというのは全てを担当したという訳ではなく、4人がそれぞれ多少は道具作りも、回路設計も、基板組み立ても、プログラミングも少しずつは分担したのだ。従って4人全員がZ80のアセンブリ言語を勉強し、分担してプログラムを書いて、大型計算機でコンパイルと呼ばれた機械語への変換を行い、回路基板に装着するメモリであるPROMへの書き込みを実施した。
回路基板の作成やハンダ付けは、小学校時代の物理部でやったラジオ制作が大いに役立った。フローチャートを書くのには、父親に貰ったIBMのテンプレートも用いた。5m近くあったクレーン車を走らせる台座もL字鋼を使った手作りで、溶接作業も行った。クレーン車本体も神田神保町辺りの模型店を巡って、モーター、歯車、タイヤなどを調達して手作りしたものだ。四年の大学生活の中で一番楽しかった時期だったかもしれない。
今日の画像は卒論の最初のほうで使った実験機材の写真を載せた序章の1頁。実験室の壁に貼ってあったキャンディーズのピンナップ写真が写りこんでしまっている。ポスターそのものは去年の12月17日の記事でも使っている。