2005年頃、「出没!アド街ック天国」というテレビ東京の番組をよく観ていた。今でもやっている筈だが、当時はMCの初代の愛川欽也だった。アシスタントはテレ東局アナの大江麻理子アナだった筈だ。
その頃、自分達も行ったことのない街をぶらぶら歩いてみるというのをよくやっていてそれを自分達で「アド街をする」と称していた。
この年のゴールデンウィークの休みに旧白洲次郎邸をアド街してみようということになった。旧白洲邸の事は、本家のアド街ック天国で観たのかもしれないし、他の旅番組だったかもしれない。この頃そういう人が戦後間もなくの頃活躍していて、その旧家が小田急沿線にあるというのを知ったのもこの頃だった。武相荘と当主により名付けられたこの白洲次郎が疎開場所として移り住んだ旧白洲邸は鶴川駅から歩いて25分ほどの場所にあるということだった。
小田急線沿線には幼少期からずっと住んでいるせいで、降りたことのない駅というのは少ない。鶴川駅というのもこの数少ない駅の一つだった。普段は小田急線急行で通り過ぎるだけの駅で、ホームの南側には畑ですらない萱かススキの野原が広がっているのが印象的な、首都圏とは思えない田舎っぽい駅だとずっと思っていた。
妻も初めてだという、これまで降りたことのない駅に各駅停車の電車から降りたって、ほとんど見当だけで武相荘を探して鶴川の住宅街を歩き出したのだった。