９０年代に入ってすぐの頃、子供はまだ３、４歳ぐらいだったがスープがぎりぎり冷めるぐらいの所に棲んでいる実家の親を伴って親子三代での旅行をすることを思いつく。時期は旅館業界が儲けの狭間を迎えるクリスマスと年末年始のちょうど間。この時期に旅館に泊まるといいと教えてくれたのは大学時代に一緒に信州ドライブ旅行を周ったＭ氏だ。空いていて安くなることも多いのだ。行き先に選んだのは何故か伊香保温泉。その当時は伊香保には特に土地勘もなく、おそらく妻が勤め先の弘済会が提携している旅館の中から選んだのだろう。
車はその五年ぐらい前にプレーリーという三列席の七人乗りという車に乗り換えていたので、親子三代でのドライブには充分な広さがあった。全線が開通したばかりの関越自動車道を渋川で降りて伊香保まで真っ直ぐな山道を登っていくと、温泉街にはもうあちこちに積もっていた雪が残っていた。
