<コスモクーペに乗るサングラスの女>
昨日は大聖寺から出発して牛ノ谷(うしのや)という所を過ぎ、細呂木(ほそろぎ)という所までやってきた。
教会の青年会には、マイカーで乗り付けてくる女性がもう一人いた。先日の初代ファミリアに乗っていた人よりは、数年後になって教会に通ってくるようになった女性だ。20代前半だったと思うのだが、真っ白なコスモクーペをマイカーとして持っていた。コスモクーペはあの時代、とてもお洒落でスポーティーな車だった。只でさえ派手な車なのに、その女性は車に乗る時はいつもサングラスを掛けていた。
その車はしかもオートマティック車だった。オートマ車を観たのは人生で初めての事だった。何度か乗せて貰ったことがある。一度、親友だったM君が運転させて欲しいといって、運転する際に後部席に乗せて貰っていたのだが、マニュアル車しか運転したことがないM君は何度も間違えてクラッチのつもりでブレーキを急に踏んで、とても怖い思いをした。
地方から出てきて大きな病院で看護婦をしながら独り暮らしをしていたその女の人は、とても勝気な喋り方をしていて、きつい性格なのだろうと思っていたのだが、ある時、歩く際にわずかに足を引き摺るような歩き方をしているのに気づいた。オートマティック車に乗っていたのもそのせいもあったのだろう。とても繊細な心をひた隠しにして強がってみせていたようにも思われた。