Ｙ湖畔、Ｈ岬の大学寮はしご旅は大学３年から４年にあがる春休みだったが、次に旅行に出たのは４年の夏休み終り近くだった。車の運転も大分慣れてきて少し長距離のドライブ旅行に挑戦したいと思っていた。
高校三年の頃に教会で知り合った年配の女性が居た。郊外の老人ホームで医療指導のような事をしながら通信教育で大学卒業資格を取得中と聞いていた。それだけでも凄い自立した女性という感じだったが、その人はマイカーを持っていて車で教会に通ってきていた。当時、女性が車を運転したりマイカーを持つというのはとても珍しい事だった。教会に通う青年女性は十数人居たが、その内マイカーを持っているのは二人きりでその一人だった。青年男性も同数ぐらい居たが、使っている車は殆どが会社や実家の車で、マイカーというのはやはり一人、二人という時代だった。日本のモータリゼーションの黎明期といってもいい時代だ。
で、その年配の女性が三年目ぐらいに実家を継がねばならなくなったと言ってこちらの独身アパートを引き払って田舎へ帰ることになった。その田舎というのが木曽路の山奥でＮ宿という昔の中山道の宿場町の元脇本陣との事だった。私の両親も行って泊らせて貰ったこともあり、私も一度泊めて欲しいと頼んだのだった。
