昨日は和木から岩国に入り、南岩国までやってきた。
岩国は勿論あの錦帯橋のあるところである。こちらも高校の修学旅行で、車内泊の後の最初の夜を、ライトアップされた岩国城と錦帯橋の見える古い旅館で過ごしている。
岩国駅には忘れられない思い出がある。前述の三人組の一人、合唱部の部長だった男だが、岩国の旅館に泊まった夜、突然、明日朝、幼馴染の女の子が修学旅行で九州へ向かう特急で岩国を通過するので、逢いに行くというのだった。待合せているのかと訊くとそうではないと言う。岩国は1分程度停車するだけで乗り降りも出来ない、何両目に乗っているのかも知らないというのだった。
(無理だからやめとけ)という分別もなかった。若しかしらというロマンに賭ける気持ちのほうが勝っていたのだろう。ならば付き合うという事になって、早朝二人で宿を抜け出し、バスで20分ほど揺られて岩国駅に降り立った。顔を知らない自分が行っても何が出来る訳ではないのに、入場券を買ってホームまでは行ってみた。時間が来て修学旅行専用の臨時特急電車が下り車線に入ってきた。友人は走りだしたが、自分は茫然とホームに突っ立っていた。やがて発車のベルが鳴り、列車はゆっくりと走り出した。息を切らせながら彼がやってきた。どうだったと訊く私にゆっくりと首を振る。(そうだよなあ・・・)
帰りは友人が出すからとタクシーに乗って、集合時間に成りかけている宿屋へ急いだのだった。