河内から入野を越え、白市駅まで３ｋｍというところまで到達した。白市駅は電車での広島空港への入口である。空港アクセスバスが発着しているそうだ。昨日の河内は距離的には空港に近いものの、峠を越えなくてはならない。山陽本線はこの峠の手前の谷間を縫うように走っている。
二日前に通過した三原駅から山間部に向かう山陽本線とは分かれて、呉線という路線が瀬戸内海側の海沿いを走ってゆく。白市と同じぐらいの距離に竹原駅がある。ここはタケノコが名産らしく、かぐや姫伝説まであるらしい。ここに竹鶴酒造という酒蔵があり、この家から日本ウィスキーの父と呼ばれる竹鶴政孝が出た。もっとも竹鶴政孝という人はこの酒造でニッカウヰスキーを興した訳ではなく、後に競合するサントリーの北海道余市に弟子入りしたようだ。その後独立してニッカウヰスキーの創業者となる。創業を辿っていくと、サントリー、アサヒビール、宝酒造、そしてこのニッカはそれぞれ何処かで繋がっているようだ。
私の父親は私がやっと酒を呑めるかどうかの年齢に達する頃、主にニッカの髭のブラックを呑んでいた様に思う。在日駐留軍で仕事をしていた父親は、駐留軍兵士等が通う教会でオルガン弾きもやっていた。そういう関係で時々米軍将校から洋酒を貰ってくることがあった。父親のお気に入りはディンプル称するようになる前のピンチと、ジョニーウォーカーのスウィングだった。ＰＸという米軍基地内のスーパーマーケットの様な所で、米軍将校から何でも好きなものを買ってやるとと言われると、決まってスウィングを所望していたようだ。
私が最初にウィスキーを嗜むようになった頃よく呑んでいたのはサントリーホワイトだった。当時、サミー・デイビス・ＪrがテレビでＣＭをやっていた。最近、常用しているのはカナディアンクラブだが、これも親父に教えて貰ったものだ。基地内のバーではＣＣウォーターと言って、これの水割りのことだった。
