いよいよ広島市内に入った。広島駅を過ぎ、平和公園を大きく迂回するように横川(よこがわ)を通過して、西広島に至る。
広島には最初に高校の修学旅行で来て、以降会社の出張で何度か訪れている。冒頭の絵は修学旅行のすぐ後に描いたバスの車窓から観た原爆ドームだ。使ったのはスタビロの色鉛筆である。
スタビロの色鉛筆はいつ購入したのかはっきりしないが、おそらくは高校に入ってすぐぐらいの頃だろう。買った場所ははっきり覚えている。御茶ノ水の聖橋口のほうから出てすぐの線路沿い古本屋街の端にあった画材店だ。店の人が薦めてくれたのだった。結婚した後も海外旅行へ行くとなると、小さ目のスケッチブックと共に必ず持って行ったものだ。ずっと押入れの奥にあると思っていたが、何時の間にか無くなっている。さすがに何十年とは持たなかったのだろう。
広島の話に戻って、高校の修学旅行では三人組でいつも行動していた。合唱部の部長だった男と、ブラバンを喧嘩別れで辞めた男と、ギター部に入るつもりで入った高校にギター部が無かったのでずっと帰宅部を通した私の三人だった。駅のホームとかで当時流行っていたコカコーラのCMソングとか、映画「男と女」のテーマ曲なんかを三人でハモって歌っていた。原爆ドームを観たショックと、土産屋などで浮かれている同級生たちとのギャップにやりきれなくなって、三人でずっとタイガースの廃墟の鳩を唄っていたのを思い出す。