菅原道真の歌で、今回の旅で初めて知ったものがある。
心だに誠の道にかなひなば いのらずとても神やまもらむ
北野天満宮の本殿入口の楼門の脇に掲げられていた。
菅原道真というのは不思議な魅力を持った人だ。学問の神様と一般に言われているが、それは学問や詩歌の才能だけで右大臣にまで上り詰めたからだそうだが、嫉妬心を買い易かったのかもしれない。不屈の精神を持っているようにも見えるが、恨みっぽく引きずるタイプにも思える。
一番面白いのが、没後天変地異が続いて祟りだと畏れられたというエピソードだ。道真自身がどうであったということではなく、彼を陥れた者たちに、よほどの自責の念があったせいなのだろう。猜疑心があればこそ、枯れすすきも幽霊に見えるという奴である。表情は人の心を写す鏡であるとも言われる。
しのぶれど色に出にけり我がこひは ものや思ふと人の問ふまで
菅原道真とは関係ないが、これも好きな歌である。
<北野天神縁起絵巻 清涼殿落雷事件>