２０１１年は何かと東京出張の多い年だった。殆どの場合、往き帰りには特急ロマンスカーを使う。しかし出張は会議の時間が押したりするので予約していても間に合わないこともある。１１月中の出張では帰りに予約していた便には間に合わないかと思っていたらぎりぎりで切符が取れ、しかも展望席が空いていたので初めて乗る展望席にしてみた。
席は２Ａで前から２列目の窓側だが、普段とは違う景色が広がっている。２列目の通路側には既に先客の若い女性が座っていて、立って席に通してくれた。発車前にスマートフォンでしきりに自分の顔を写し、メイクを直したり、自撮したりしている。いまどきの娘だなと思っていたのだが、突然話しかけてきた。ウォークマンを聴いていたので、改めてイアホンを外してみると、この電車は箱根湯本に停まるのかと英語で訊いてきたのだ。それで初めて日本人ではないことに気づいた。中国人らしかった。自信がなかったので「I think so.」とだけ答え、ふと思いついて、ポケットに入れておいた切符を取り出してみる。その娘も覗き込んで、漢字で新宿―ＸＸと書いてあるのをみて、「Oh, no.」などと言うので、「No, it’s my ticket. Here’s a name of this train, Hakone no.21. So I think this train’s terminal station is Hakone Yumoto.」と教えてやると安心したようだった。その後、車内放送もあって、終点は箱根湯本とアナウンスがあったので、そう英語で教えてやる。
