今回で北投温泉博物館の紹介は最後にする。この温泉博物館は様々な建築様式が取り入れられ融合されているが、内部を重厚で落ち着きのある雰囲気にしているのは、明治から大正、昭和初期に採用された日本ならではの建築様式だと思う。不忍池近くにあるジョサイア・コンドルが設計した岩崎邸という西洋建築があるが、まさしくこのスタイルだ。飾りのついた手摺りと欄干の階段、腰板を張られた壁。上げ下げ窓等々、同じ様式の内装が温泉博物館をより重厚なものにしているが、おそらくこれらは日本人によって持ち込まれたものなのだろう。
北投温泉博物館 4
今日の最初の画像は、前日紹介したステンドグラスで周囲を飾られた浴槽の別のアングルからの眺めだ。既に温泉としての用途では使われていないので、湯は張られていないが、その名残のような底面の滓は当時の温泉に鉄系の成分が含まれていたことを想像させる。雰囲気としては古代ローマの公衆浴場を彷彿とさせる。
次の画像は、また全然雰囲気の異なるタイル張りの湯殿だが、古代ローマやイスラミックなアルハンブラ宮殿などのモザイクタイルと違って、何処か懐かしい感じを彷彿とさせる。思い起こしてみると、日本の昭和初期に家庭に風呂が定着してきた頃、タイル張りで浴室を作る際に、規模は異なるがこんな感じのタイル張りがよく見られたような気がする。おそらく日本から持ち込まれた感性と技法で作られたものではないかと思われる。
北投温泉博物館 2
温泉博物館は川沿いの急斜面の途中に建てられている。蓮池のある公園の下側から昇っていくと、煉瓦積みと板張りのサイディングを組み合わせた妙に懐かしいような二階建ての建物を見上げる感じになる。一階部分が公衆浴場で、二階は吹き曝しの休憩所のようになっている。
ぐるっと周囲を巡って反対側に出ると今度は建物の二階と同じ高さの辺りに川に沿って続く道に出る。こちら側から眺めると地上階と地下になっているようにも見える。それにしても煉瓦と板張りがとてもうまく融合していて、温かみのある造りになっている。
新北投駅から温泉博物館への道
新北投の駅から取りあえず温泉博物館を目指すことにする。駅から川沿いになだらかな上り坂が続いている。そこを昇っていくのだ。川の水量はそんなに多くないが、水連があちこちに植わっている。
反対側の川岸には大きな建物がある。何かと思ったら加賀屋という日本人が経営するらしい大きな旅館というかホテルだった。
我々が歩いている川岸のほうにはいかにも温泉街にありそうな食べ物屋に混じって、時代理髪店という古めかしい床屋があった。それこそ時代をずっと眺めてきた床屋なのだろう。
新北投の新婚旅行夫婦
新北投の駅に着いて改札に向かうさいに、一際目立つ背の高いミニスカートの中国美人を発見する。よく見ると、同年代の若い男性に伴われていて、明らかに新婚旅行の夫婦らしかった。
荷物の大きさからして、台湾内からの旅行ではなく、大陸からの旅行者であるのはほぼ間違いなさそうだった。
北投というのはこの旅行の時にその存在を初めて知ったのだったが、もしかすると日本で言えば数十年前の宮崎とか熱海のような新婚旅行のメッカなのではと言う気がしてきた。とは言っても、他に何組も新婚旅行らしいカップルを見た訳ではない。中国大陸から新婚旅行に台湾までやってこれるのは、中国の中でもかなり裕福な家庭なのだろうと想像された。
新北投の駅は終着駅だけあって、線路の尽きたところに駅舎があり、駅舎の屋根の上には日本で言えば大鳥居のような屋根の付いた門が付いている。江ノ電の江の島口駅みたいな感じがした。