この日は結局台風絡みの雨に降りこめられて一日中息子のアパートで掃除をすることになる。夕食を何処で採るかをずっとスマホやタブレットを駆使して調べていた妻が近くに上海バンドという評判の店があることを見つける。息子も知らない店だった。6時前に雨脚が少し弱まった所で傘を差して行ってみる。この奥に本当に店があるのかと言う様な暗い路地を抜けると、文化住宅の一階を改造したような店が見つかった。強面の親爺と貫地谷しほり風の声を出す若い娘の二人だけでやっている店で、なかなか注文のタイミングが掴めない。
やっとの事で頼んた料理はどれも絶品だった。常連ばかりが来る店らしく、後から入ってきたアベック二組はテレビ関係者に思えるような話しぶりで最初の組の男と、二組目の営業風の女性が実は知り合いで偶然遭ったという話しぶりだった。