合宿本体では恋のかけひきはあったものの、結果としては何の進展もなかった。そんな合宿が終わった数日後、合宿に参加した中では最年長の一人である先輩から伊豆の別荘での一泊旅行に誘われた。
その先輩のおじさんという人が大工で、伊豆に別荘を建てたばかりだというのだ。客への引き渡しの前に一晩だけ使っていいと先輩が鍵を渡されたそうで、サークルの一部のメンバーで合宿の余韻を愉しみながら一晩を過ごそうという趣旨だった。
その先輩はサークルの中で一人、二人しか居ない運転免許を持ち、しかも家の車が使えるという人で、伊豆旅行には車を出すという。黄色の昔の型のフォルックスワーゲンで、手動式のサンルーフが付いていた。
その車に乗っていくのが男性は先輩と私。女性は当時気になっていた女性ともう一人の同じグループの女性ギタリストだった。その女性ギタリストは合宿の会計など親身になって手伝ってくれたのだが、恋愛感情が芽生えそうな相手ではなかった。その他に男性が三人ほど参加したのだが、彼等は後追いで電車でやってくるとの事だった。
