技術ミーティングで訪れたＧＭのテクニカルセンターでは、お互いのプレゼの後、技術論議もした。通訳代りにワシントン事務所駐在員のＳ氏が日本からの出張組三人に同行してくれたが、Ｓ氏も会話全てを理解した訳ではなかった。
ミーティングで驚いたのは、会議室の傍らにコーヒーサーバーと共にベーグルやドーナッツなどのお菓子が常備されていて、話をしながらそれらを飲み食いすることだった。米国式の歓談の仕方を初めて経験したのだった。
ＧＭ側は開発設備なども見学させてくれた。私はエンジン開発部門に居たが専門は電子制御とコンピュータ関連だった。当時、自動車業界ではコンピュータを駆使して設計、製図を行うＣＡＤ（Computer Aided Design） を各社が競って導入し始めていた時期だ。私の会社でも導入が始まっていたが、まだ２次元にしか対応しておらず、演算速度も遅かった。それに対しＧＭのものは既に３次元設計をしていて、コンピュータの演算速度も遥かに速く、立体映像を動画のように動かしながら眼で確認出来るというものだった。ＧＭの技術員も相当な自信を持って、我々はここまで出来るんだぞと言わんばかりに見せつけていたように思う。米国の自動車会社がまだ輝きを失っていない時代だった。
