１９８２年の新婚旅行に始まって、４年の間に３度ヨーロッパへ夫婦で海外旅行をした。しかし１９８６年からは恒例のようにしていた夏の海外旅行は暫くおあずけとなる。妻が最初の子を妊娠したからだ。代わって１９８６年に初めての海外出張をする機会がやってくる。
その当時、百人ぐらい居た同じ設計部で、海外出張をする人は年に数名、一人の設計者が海外出張するのは生涯平均で一回にも満たなかったように思う。勿論、その後、数年の間に事態は一変するのだが。
私の場合は米国の技術発表会への講演出張だった。会社全体でみてもこの発表会で講演をするのは毎年数名規模だった。半年以上前から社内公募と推薦が始まり、最終的には３名から５名程度に絞られるのだった。
私の場合は自分からの志願ではなく、同じ大学の先輩上司からの推薦だった。同じ年の候補者の中に私のとテーマが似通っている人がもう一人居た。自動車の、特にエンジンに対する電子制御の最新状況についてで、私のほうは現実性のある現場最前線の事情、もうひとりのほうは研究という見地からの将来予想がメインだった。結局は審査会で両方にゴーが出たのだった。
