前日紹介したアクリル画の師、矢吹申彦氏の画集だ。真似たというと語弊があるが、矢吹氏の世界が醸す不思議な世界の空気のようなものが表せればと思って描いていた。
矢吹氏の絵を最初に知ったのは、多分好きな作家であり、好きな俳優であり、好きな映画監督でもあった伊丹十三氏の文庫本の表紙の絵を通じてだったと思う。その不思議な世界観に惹かれて画集を捜して購入し、自分でも描いてみたいと思うようになったのがアクリル画を描き始めたもう一つの理由であった。
アクリル絵の具は何故なのかよく判らないが、現実にないものを描くのに適しているように思う。有りそうでいて何か非現実的なものを表現するのに向いている気がするのだ。シャガールの絵の世界がそれに近いかもしれない。キリコやダリの世界もこれに近い。
矢吹申彦氏の画集、風景図鑑を何十年ぶりかで開いてみたら、すっかり忘れていたのだが、伊丹十三氏が文章を寄せていた。あの画集を買った時、まだ伊丹氏は生きていたのだ。太宰治、三島由紀夫、川端康成・・・。どうして偉大な作家は自らの手で命を絶ってしまうのだろうか。