ノートルダム大聖堂の見物を終えると、地下鉄メトロでまっすぐホテルを目指すことにする。地下鉄がモンマルトルに近づいてくると、段々危険なゾーンになるのが肌で感じられる。特に乗換えをするバルベスロシュコー付近では怪しげな人達が多いだけに緊張する。と、思っていたらそのバルベスロシュコーでの乗換えの間に、私の後方で妻と娘が騒いでいる。どうも誰かが妻のバッグを探ろうと手を出して、それに気づいた娘がその手を出した少年をはたいたらしく、それで妻が大きな声を挙げたらしかった。私も思わず興奮して「この男か。こいつか。」とホームの上で叫んでしまっていた。
まだ仲間が近くにいるらしかったので、その辺りは避けて急いでホームの奥に進む。息子も何とか自分達で防ごうと私のバッグのチャックをしっかり握ったりしていた。最後にホテルのあるアンバースの駅で地上に出て、ホテルのある側へ道路を渡ったところで、やっと皆でほっと息を吐いたのだった。